航空事故


 航空事故とは、航空機の運航中に起きる事故である。事故の形態としては、墜落・不時着・オーバーラン・火災・衝突などが挙げられる。特に墜落は絶体絶命のアクシデントだといえる。


 墜落は飛行中に突然発生することが多く、空港内だけでなく市街地、海、山など墜落する場所を問わないため、市街地に墜落すれば乗員・乗客だけでなく数十数千人の住民が巻き添えになる危険もある。胴体が寸断されるなど、空中で跡形もなくなるケースと原型を保ったまま墜落するケースがある。前者のように「胴体が寸断」され、または「空中分解」すれば、パラシュートをつけずスカイダイビングをするようなものになるため、乗客の生存はほぼ絶望的である。後者の「原型を保ったまま墜落」するのも似たようなものではあるが、機体構造が衝撃を吸収してくれるため、墜落場所と座席位置によっては生存できる可能性がある。ただし墜落当初は生存していても、その衝撃で火災が発生した時や、墜落場所が海の上や密林のまっただ中であったり身体にショックを受けていれば脱出を図る前ないし救助を待つ間に死亡することもある。

 航空会社にとっては一度の事故が航空会社全体の信頼や存亡に関わる事態に発展することがあり、また、事故の原因が航空機の欠陥によるものであることが明らかになった場合、当該の航空機メーカーや業界全体の信頼問題となりうる場合がある。このため航空産業発足の当初から、航空事故に対してはその原因究明と対策に全力が注がれてきた。事故で判明したことや得られた情報は、同様の事故が再発しないよう以後の航空機の設計や運用に生かされている。

 航空事故のおよそ8割は、機が離陸・上昇を行う際と進入・着陸を行う際の短い時間帯に起こっている。このなかでも離陸後の3分間と着陸前の8分間の「クリティカル・イレブン・ミニッツ(魔の11分)」と呼ばれる時間帯に事故は集中している。巡航中に発生する事故も少なくはない。事故原因の大半は人為的なミス(操縦ミス、判断ミス、故意の操作ミス、定められた手順の不履行、正しくない地理情報に基づいた飛行、飲酒等の過失など)、または機械的故障(構造的欠陥、不良製造、不良整備、老朽化など)に端を発するものとなっている。

 航空事故を専門に追跡する『planecrashinfo.com』が1950年から2004年までに起った民間航空事故2147件をもとに作った統計によると、事故原因の内訳は以下の通りとなっている。
37% - 操縦ミス
33% - 原因不明
13% - 機械的故障
7% - 天候
5% - 破壊行為(爆破、ハイジャック、撃墜など)
4% - 操縦以外の人為的ミス(不適切な航空管制・荷積・機体整備、燃料汚濁、言語、意思疎通の不良、操縦士間の人間関係など)
1% - その他

 またボーイング社が行っている航空事故の継続調査によると、1996年から2005年までに起こった民間航空機全損事故183件のうち、原因が判明している134件についての内訳は以下の通りとなっている。
55% - 操縦ミス
17% - 機械的故障
13% - 天候
7% - その他
5% - 不適切な航空管制
3% - 不適切な機体整備

 操縦ミスは依然として航空事故原因のほぼ半数を占めているが、この数字は1988年〜1997年期には70%もあり、過去20年間に着実に改善されてきたことが分かる。

 アメリカの国家運輸安全委員会(NTSB)の行った調査によると、航空機に乗って死亡事故に遭遇する確率は0.0009%であるという。アメリカ国内の航空会社だけを対象とした調査ではさらに低く0.000034%となる。アメリカ国内において自動車に乗って死亡事故に遭遇する確率は0.03%なので、その33分の1以下の確率ということになる。これは8200年間毎日無作為に選んだ航空機に乗って一度事故に遭うか遭わないかという確率である。これが「航空機は最も安全な交通手段」という説の根拠となっている。2001年9月のアメリカ同時多発テロ事件の後、アメリカ人の多くが民間航空機による移動を避けて自家用車による移動を選択したために、同年の10月から12月までのアメリカにおける自動車事故による死者の数は前年比で約1000人増加した。

 航空事故を引き起こすリスクの多寡は航空会社やその運航地域によって異なり、一般に先進国では低く、発展途上国では高い傾向が見られる。また旧共産圏諸国では航空機事故を隠蔽する体質があったため、航空事故の詳細が明らかになったのはごく最近のことである。ソビエト連邦崩壊後にはアエロフロート機を中心に数十件にも及ぶ事故が公表された。

 近年において、特に危険な地域とされているのはアフリカ諸国と西アジア諸国という結果が出ており、実際にこれらの地域においては航空事故が多発している。ドイツの航空業界専門誌『アエロ・インターナショナル』(AI)が2005年3月号の誌上で発表した「安全順位」では、1946年以降一度も死亡事故を起こしていないカンタス航空が“最も安全な航空会社”となった。そして2位にフィンランド航空、3位にキャセイパシフィック航空の順に続いている。一方“安全性が最下位”との結果が出たのは1位にトルコ航空、2位にエジプト航空、3位にエア・インディアであった。しかしこのような「安全順位」はその評価や計測方法が一定していないことから、あくまで参考程度のものである。なお、欧州連合は域内の飛行が禁止されている、つまり危険とみなされる航空会社名を掲載した「ブラックリスト」を定期的に発表しており、最新のリストではフィリピン航空や高麗航空などが明記されている。

 しかし航空事故はさまざまな要因が複合して事故に至るものであり、多くの航空機や人命を失った航空会社のみに安全性の問題があるとは必ずしも言い切れない。たとえば一機の事故としては史上最多の死者を出した日本航空123便墜落事故の場合、その原因は過去に製造元が機体に施した修理のミスだった。さらに、厳密には航空事故ではないものの、アメリカ同時多発テロ事件においてはハイジャックにより4機が犠牲になった。

 飛行機に乗るのが怖い症状のことを飛行機恐怖症という。原因は、過去の航空大事故報道(例えば、1985年の日本航空123便墜落事故の映像や、2001年のアメリカ同時多発テロ事件でニューヨーク世界貿易センタービルにハイジャックされた定期便旅客機が突入した映像が繰り返し流された)によるトラウマ、過去に自分や知り合いの乗った便が何らかのトラブル・事故に巻き込まれた経験を体験したり聞かされたりした事、金属製の巨大な物体が空中に浮かぶことが不思議で理解できない事、などが挙げられる。

 なお、航空機による死亡事故に遭遇する確率は、前述したようにその他の死亡要因(疾病や飛行機以外の交通事故)と比較すれば、相対的には安全である。ただ、それでも航空機で事故に遭遇した場合は高い確率で死亡事故になってしまう事や、飛行機に乗らないこと以外に起こり得る危機に自分の意思で対応・対処できる余地が全く無い事が、心情的に納得できないものだと思われる。ひどい場合は、医療機関で睡眠薬などの薬剤を処方したり、飛行機を使わざるを得ない移動が不可能となったりと、仕事や生活に支障を来たす場合もある。

【飛行機恐怖症の有名人】
○映画監督のラース・フォン・トリアーはアメリカ合衆国を舞台にした映画をたびたびつくるが、飛行機恐怖症のためヨーロッパを出たことがなく、代わりに陸路移動で済むスウェーデンなどでロケを行っている。

○アメリカンフットボールのコーチ・解説者であるジョン・マッデンは、飛行機恐怖症のため、広大なアメリカを試合のたびにマッデン・クルーザーと呼ばれるキャンピングカーで移動している。このマッデン・クルーザーには、彼の選んだホース・トレイラーと呼ばれるMVPの顔を週ごとに塗装していた。また、バス移動のため、ホノルルで行われるオールスター(プロボウル)の解説はしない。

○サッカー元オランダ代表選手のデニス・ベルカンプは極端な飛行機恐怖症で、可能な限り陸路で長時間をかけて移動していた。代表や所属クラブチームが遠隔地で試合を行う場合、直前の試合を欠場して先に出発したり、遠征直後の試合に間に合わなかったりすることもあった。ベルカンプは、オランダ代表の先輩で「空飛ぶオランダ人」と呼ばれたヨハン・クライフと対比され、「飛ばないオランダ人」と揶揄された。

○元プロ野球選手の江川卓は飛行機恐怖症で有名。国内の移動の場合、どんなに時間を要しても常に鉄道などを用いる。飛行機でなければ行けないハワイで開催された名球会のイベントの取材時には長嶋茂雄から「江川さん、よく飛行機乗れましたね」と言われたほどである。ちなみに、江川夫人は元客室乗務員である。

○元プロ野球選手の牛島和彦も飛行機恐怖症で知られる。現役時代、解説者時代、そして横浜ベイスターズの監督時代も、時には始発の新幹線や夜行列車を使うなどして極力陸路で移動していた。


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